ギルベルトとダスカーの悲劇
アッシュとの支援会話
アッシュとギルベルトの支援会話Cを見て、これはと思い、Bを開けて撃沈。
ギルベルトが、ブレーダッド家の騎士をやめたのは、ダスカーの悲劇のとき騎士の自分が陛下の傍にいなかったことへの悔恨。
それで一度騎士を辞した。
…………。言ってもいい?
理由吹っ飛ばして、出て行ったタイミングとしては、最悪だよね!?
一気に両親亡くして、友人(の兄)も死なせてしまって、自分以外全滅の惨状に打ちひしがれて、後ろ盾なくして心細い思いをしているであろう若き13歳の王子(+自身の妻子)を置いて、出て行ったの??
どう考えても「一番ディミトリの傍にいなくちゃいけないとき」じゃない!?
強い自責の念にかられてなのかもしれないし、真面目で責任感の強いギルベルトの性格を知る周囲は引き止められないと思ったかもしれないし、ブレーダッド家の実権が変わった(叔父リュファスに移った)から居づらかったのかもしれないけど。
「陛下の傍にいなかった悔い」なら、尚更、何故ただ一人生き残った王子を省みなかったんだ。
一番出て行っちゃいけない時に出ていった気がするよ……。
そもそも『ダスカーの悲劇』が策略なら、ギルベルトの不在を狙ったのかもしれないのに。
その上ギルベルトが職を辞したら、敵方としてはもう完封状態では……(※そしてダスカーの悲劇は、ディミトリ処刑に)
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ディミトリも、ギルベルトがダスカーの悲劇が理由で職を辞したいと言われたら、止められないでしょ。
王国の騎士制度がどうなっているかは分からないけど、セイロス騎士団を見る限りは雇用契約っぽいし、だとしたら騎士の側でも、主人を選ぶ権利がある。
もしかするとディミトリは「ギルベルトはブレーダッドの主人であり父である国王に仕えていた。だから自分に仕えてくれるわけではない」と思ったのかもしれない。
……口にして言わないけど「見限られた」と思ったんじゃないのかな……。
いや、どうして、2部でギルベルトが『ドゥドゥーの代わり』なのか、よくわかった気がして。
同時になんで1部で『ディミトリがドゥドゥーを従者としていたか』がわかって、泣いてる。
王国の騎士であり、本来なら自分に仕えるべきはずだったギルベルトは出て行って。
その後でダスカー人のドゥドゥーを誰よりも――王国の騎士よりも、自分自身の従者として信頼して傍に置いた。
あの時生き残った王子は、身内も味方もほとんど失われた中で、自分と同じ年頃の、国王殺しとして犯人扱いされているダスカー人を従者にしたんだよ。
たった一人生き残ったディミトリは、事件の唯一の生き証人で「ダスカー人が犯人ではない」と知っているから。
そしてたぶん、ドゥドゥーくらいしか、信頼できる相手がいなかったから。
(※ドゥドゥーとしては「ダスカー人にも良い奴も悪い奴もいた。だから手引きをしたかもしれない」と思っているようだったけど。無実かどうか分からないと慎重な姿勢だったよな……本当にドゥドゥーの支援会話も凄かった……)
自分の国の兵士に陰口を叩かれながら、それでも真相を突き止め、死者の無念を晴らそうと毅然としてたってことでしょ。
ディミトリは、それくらい孤立無援だったってことだよね?
……あまりに……あまりでは……。
「深い孤独に身を置きすぎた」とギルベルトは言ったけど、それはこの5年間の話じゃなく、13歳のあのときからってことなのかもしれない。
そしてギルベルトは「出て行った」という自身の犯した罪も含めて、そう思って語ってたのかもなあって。
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あと、もう一つ、このギルベルトの出奔理由を聞いて、不安になった要素が。
叔父殺害容疑のときのコルネリアとの会話というか言葉がさ。
「ええ。警護を掻い潜り、あんな殺し方ができるのは……殿下くらいではなくて?」
この同意を求める根拠、どこにあるのかって話になるんだけど。
※ギルベルトがダスカーの悲劇を機に騎士を辞めて、ブレーダッドの家を去ったとするなら『ギルベルトはダスカーの悲劇以降のディミトリの戦場での戦い方を知らない』ことになるので。
知るとしたら『13歳以下のディミトリ』ってことになるのでは?
闇が、更に濃い(汗)
こうなるとディミトリとギルベルトの支援会話がすごく気になるんだけど!!
(早く心を開いてください殿下)
ドゥドゥーとの支援会話
「いつかの少年が大きくなったものだな」
「あんたとは面識と呼べるほどのものもなかっただろう」
「そうだな二、三度すれ違った程度」
って、やっぱりほぼ入れ違い――ダスカーの悲劇の直後、ギルベルトは出て行ったわけで。
で、だからドゥドゥーとギルベルトは対というか『ギルベルトの代わりにドゥドゥーが従者として仕えるようになった』ってことだよね。
「この罪の重さ、お前にならばわかるだろう」
「贖罪を願う暇があるなら、その手で槍を持つべきだ」
「……それでは、死者への償いにはならない」
「だが、祈りが生むのは自己満足だけだ」
「……お前にはわかるまい」
「……ああ、わからん。あんたはファーガスにとって、殿下にとって必要な人間だった」~中略~
「生きろ命じられれば、死んでも生きる。そうでなければ、共に死ぬ。
……元よりおれには、殿下のほかに、失うものなどない。
家族も、故郷も。守るべきものは、ただ一人あの方を除いて、すべて失った」
本当にもう……!! この件に関しては、ドゥドゥーの言葉が圧倒的に重いし、正しいよ。
ギルベルトの性格からして「騎士としての罪の重さに打ちひしがれる」のは分かるんだ。
でも「いつかの少年」とドゥドゥーを見て、そう呼びかけてしまうなら……ギルベルトの言葉は通らないんだよ。
どうしても、欺瞞や言い訳になってしまう気がする……
ディミトリが13歳(14歳の誕生日前と思っているので)、巻き込まれて滅ぼされた民のドゥドゥーは14歳か15歳なんだよ。
ギルベルトが罪の重さに耐えられなくなって逃げた時、後には少年が残されたわけで。
過去や死者を想い自身の不慮を騎士として悔やむなら、自分自身の誇りも価値も捨てて少年の未来を守るのも、また騎士だったのでは?って話になる気がするんだよ。
だからもう「殿下の語られる、王の騎士ギュスタヴの背を追って、おれはここまで来た」のドゥドゥーの言葉が、本当に重いんだけど。
『王の騎士』だよ!!(泣)
その後の「だがあんたは……」の途切れた言葉の後に続くものは、たぶん誰もが自分を責めているように感じるギルベルトは「そんな偉大な騎士ではなかった」と補完してしまうんだろうけど、ドゥドゥーは「いなくなってしまった」という立ち去った事実を指すんではないかなあ。
アネットもドゥドゥーも、ギルベルトがいなくなったから「背を追って」ここまで来たんだよね。
※そしてこの辺で、うっかりギルベルトも好きになってしまっていることに気づきました(笑)
あるキャラのもつ別の顔、弱さ、人間臭さは、すごく好き……。
ディミトリとの支援会話
ギルベルトとの支援会話すべて見ました。
なんとなくディミトリは自殺念慮っぽい?とも思っていたので、ちゃんと出してやってくれたことが嬉しかったし凄いなあ。
これは一度は外に出して、誰かが受けとめなきゃいけない部分と思うし。
* * *
2部前半、ディミトリが、復讐心に燃えている割には、他人も自分も顧みなくなっていたのが疑問ではあったんです。
もし『復讐を遂げる』ことを真に目指しているなら――もっと現実的で計画的な行動をとる気がしたので。
一応、一国の王位継承者であり、大義名分を携えて国を動かすことはできる立場にあるなら、復讐のため本格的に軍備を整えて慎重に計画を練って、何が何でもエーデルガルトの首を取ってもいいんだよなって。
(1部のディミトリを見る限り、そうした計画性と実行力を取れる器量はあるように見えたし)
手負いの獣ならなおさら、死なばもろともでエーデルガルトの首に食らいついてやるガッツがあってもよさそうなのに(笑)
言葉の割には、実現させたいという強い思いが、見えなかった。
2部開始直後のディミトリは、ものすごく自他に対して無頓着だし、行動も杜撰で。
なんとなく、復讐と口にしつつも、当人の感情としては、実は「どうでもいい」
≒死にたがっていた(むしろもう終わりにしたい)のかな?という感じがして。
口(表向き)には復讐出すけど、心(内側)にあったのは妄執の方。
生者<死者だから、もう現世で何か成すよりも、向こう側に行きたい思いだったのかなって。
(『妄執の王子』というこのタイトルは、ものすごく上手くて大好き……妄執対象は『復讐(生者)』じゃなく『死者(死)』なんだよね)
だからディミトリの豹変っぷりというか、あの一連の行動の本当の意図は
「他人を殺しつつ、自分も殺されたい」
自暴自棄の延長の、緩慢な自殺念慮だったのかもなあって。
『遺体も放置していた』のも、あれは「見つけて(殺して)欲しい」のサインでもある気がする……。
実際それでギルベルトは見つけているし、帝国や自国でも噂になっていたわけだし。
※もし本気で復讐をしたいなら、自分自身の痕跡は消して、周到に準備を重ねると思う。じゃないと復讐相手に気づかせるし、用心をさせるし。
……まあ、あまりに後ろ向きすぎて火種が大きいというか、エーデルガルトに負けず劣らず、世界に対して大迷惑というか。
なんだかんだで正反対すぎて似ている姉弟では?
先生の立場としては、青獅子他メンバー、騎士団や教師、自軍の命、その他も巻き込まれてしまうので、賛同はできないし「可哀想だが、君はそんなことを言ってる暇も立場もない」だったんですが……残酷だけど、それが王の肩に乗るものの重みでもあるので……。
(それを認めちゃうと、グレンやこの時点では死んだと思われていたドゥドゥーの死が『無駄』になってしまうんだ。
死者を本当に思うのなら、必要なのは『死者が残した命の使い方』だから。たぶん、ディミトリには不本意なんだろうけど)
* * *
とはいえ、ギルベルトも罪の重さに耐えきれず、一度出奔しているわけで(笑)
それよりはるかに若かったディミトリに『罪悪感に縛られずに生きろ』は厳しいし難しいよね。
そのうえでギルベルトの意味を思うと――なんとなくギルベルトとロドリグは、二人で1セットというか、二人でともにディミトリを救う役を背負っていたと思っています。
ロドリグは(別記事で補足してますが)彼なりの事情や信念に基づいて、命を懸けて、ディミトリの目を覚まさせる役。
ギルベルトは心を失った王子を探して、引っ張って、付き従って、彼を王位につける役。
王都奪回の観衆に答える場面で
ディミトリ「……俺は、かつて彼らを見捨て、この国を逃げ出したというのに、か?」
ギルベルト「たとえ、そうだったとしても……それでも、この光景に偽りはない」
って返答していて。
これは、もしギルベルトがずっと国に残っている立場だったら、綺麗事めいて軽くなっちゃう気がするんです。
でもギルベルト自身も、一度主君を見捨てて逃げ出していて。逃げ出すべきではなかったと心底後悔して。
獣みたいになってるディミトリを探して、苦しみながら付き従って(これはギルベルトの贖罪過程でもある)、ここまで連れてきたからこそ言えるし、響くよなって。
自身もほぼ同じ罪を犯してるからこそ、やり直せるし、やり直すべきだ、って。
(※ディミトリを連れて帰ってきて王位につける役は、他の誰がやるよりギルベルトが効果的というか。同じ罪人の感情や立場を持つギルベルトだからこそ……と思ったので)
* * *
……とはいえ。
欺瞞や後悔や罪悪感は決して消えない、むしろそれは死者も生者も両方ともに背負っていくことになる、厳しい道のりなので。
なので、ギルベルトとの一連の支援会話がものすごく好きです(笑)
同じ罪の重さを知っているからこそ、振るった刃はディミトリに死を錯覚させるほどの太刀筋だったと思うし(ギルベルトも本気じゃなければ殿下は見抜くと分かっているから真剣だったと思う)、死ねば楽になるのも自身で味わっていて、それでもなお生きていなくちゃいけない苦悩も骨身にしみてる。
「殺さない」し「あなたは死ねない」のメッセージでもあるよなって。
「生きてください。生きて……」は屍の数と等しい重みと痛みで、それを受けての「ありがとう」も、感謝であるけど、覚悟だよなあ。
思えば、ギルベルトもディミトリも、ダスカーの悲劇の後から都合9年の歳月を失った=罪人意識や生存者の罪悪感を抱えて生きることを余儀なくされたわけで。
この二人の生真面目さと時々見せる鬱屈具合と切れた時の凄惨さは、よく似てる(笑)