人物紹介代わりのルシカの作文
拍手お礼にしていた他愛のない小ネタです。全10種。
その1:ルシカの疑問
セラには一つ、特技があります。
動物の扱いがうまいことです。
動物の方から避けて歩くような人物なのに、不思議でなりません。
セラは別に動物好きではないと、お義姉さんから聞きました。
けれどその割には、旅をしている最中、妙にじっくり動物を見ているように思います。
しっぽを振ってじゃれついてくる人懐っこい犬を見て、フッと静かに笑いました。
鼠をいたぶって食事にして、遊び疲れて昼寝をしていた猫を見て、ちょっと遠い目をしました。
未開の森で、植物のつるを使って、身軽に枝から枝へ飛び移る小猿を見て、小さな溜息をつきました。
動物を飼うのは大変だという話を聞いて、しみじみ共感していました。
お兄ちゃんに話したら、気にしないことだと力強く慰められました。
お義姉さんに聞いたら、困ったような顔をされ、
でも弟の面倒見がよくなったのは良いことだから、と言われました。
さっぱり理由が分かりません。
うちの女主ルシカは、基本は妹扱いですが、時には動物扱いされています。
そして、とても賢い子という設定ですが、作文は下手なようです。
筆記能力が低いかわりに、会話能力が高くなっているのだと思われます。
ちなみに「お義姉さん」とはシェスターのことです。
その2:セラへの謝罪
パーティの金銭管理は全部セラがやっています。
無駄遣いはするな、が口癖です。
だったらセラの好き嫌いもなくしなよと口ごたえをしたら、
誰のせいで食費がはねあがっているんだと怒られました。
前日も夜遅くまで出納計算をしていて、睡眠不足で不機嫌だったようです。
セラのバカ、と内心で思っていましたが、この間宿に泊まったときのことです。
床に置いてあったセラの鎧を、うっかり蹴飛ばしてしまったら、
肩についていた角のような飾りの部分が、簡単にとれて床に転がりました。
どうやら傷んでいた部分を、接着剤で補強していたようです。
慌てて元に戻したら、なんとか無事くっつきました。
セラがお風呂に入っている最中の出来事でした。
そのとき本気でごめんなさいと思いました。
ギルドの依頼をいっぱい受けようと誓いました。
うちの月光は人知れず苦労人で、生活感覚ゼロのミイス兄弟にかわり、パーティの金銭管理担当です。
……クールでニヒルな彼が好きな方、本当にごめんなさい。
ルシカが冒険に出たばかりで、ギルド依頼レベル1の苦労裏話。
その3:ロイの企み
お兄ちゃんは今、お義姉さんと一緒に暮らしています。
毎日とても幸せそうです。
二人が知り合ったきっかけは分かり切っているのでどうでもいいとして、
いつの間に恋人にまで発展したのかと聞いたら、
色々教わっているうちに、そうなっていたと兄は遠い目をしました。
そして今度は、自分が色々お義姉さんに「教え返す」番なのだそうです。
ここまで話を聞いたら、セラが青筋を立ててやってきました。
悪巧みを関知したので飛んできたそうです。
――月光が教えてくれた、と低く呟きました。
日光と月光はお互いに共鳴し合うので、そういうこともあるかもです。
そのときお兄ちゃんが、ちっと舌打ちをしたのを聞いてしまいました。
最近お兄ちゃんは、旅の餞別にと、しきりに日光を譲ってくれようとします。
でも絶対受け取るな! とセラから無言の圧力を受けているので、怖くて受け取れません。
ロイ&シェスター救出後の話。二人はいつの間にか夫婦になっていたらしい。
うちの日光はしたたかでシェスターラブです。下手をすると一番の危険人物。
ちなみにルシカはシェスターをお義姉さんと呼んでいますが、セラはロイをお義兄さんとは呼べていません。
その4:シェスターの特技
お兄ちゃんを救出したら、もれなくお義姉さんができました。
本当にセラと血がつながっているのか不思議に思うくらい、
優しくて繊細で、ちょっと天然な人です。
セラがシスコンな理由がよくわかりました。
特に最近、兄の様子がおかしいので心配が募ります。
闇の神器の副作用でしょうか。
仮面が外れたにも関わらず、兄の危険度がアップした気がするのです。
でもこの間、偶然目撃した出来事で、安心することができました。
兄は昼間から、けっこう過剰なスキンシップを求めているようです。
そんな兄に、ついうっかり……だったのでしょう。
お義姉さんの口から、サイフォス、おあずけ! の言葉が漏れました。
言った方も言われた方も、あ、と驚いた顔をしてましたが、効果は絶大。
金縛りにでもあったかのように、お義姉さんに迫る兄の動きが止まりました。
その後、しばらく兄は敗北感に打ちのめされ、
悩んだお義姉さんの相談も受けましたが、
相手のことを思いやるのは、まず自分の身を守ってからだと、
セラの言葉をそのまま伝えました。
お義姉さんはその助言をもとに、けっこううまくやってるらしいです。
うちのシェスターは天然で、うっかり最強です。
あの義妹の尊敬を受け、あの男二人に愛される、隠れた里の女王様。
本人も気づかないうちにアーギルが出ていたりします。
その5:家族のようなもの
突然の魔人の来襲でお父さんが亡くなりました。
お兄ちゃんは行方不明になりました。
かわりにお兄ちゃんの親友がやってきて、旅に連れ出してくれました。
その親友はセラといって、お姉さんを捜している旅の途中でした。
両親はすでに亡くなっていて、お姉さんが唯一の家族だそうです。
話を聞いて全く同じ境遇に、他人事と思えなくなりました。
わたしがお兄ちゃんを失ったら、セラがお姉さんを失ったら、
それぞれ、「家族」がなくなってしまうのです。
危うくそうなりかけましたが、
なんとか無事にお兄ちゃんもセラのお姉さんも戻ってきました。
同時に新しい家族のようなものができました。
ミイスの村に戻った二人は夫婦となりましたが、
わたしたちが戻ったときには、父母のように出迎えてくれます。
わたしとセラは今でも世界を旅していますが、
なつかしい暖かい戻れる場所があるということは、安心できることだと思います。
うちのミイス村メンバーはこんな感じです。
日光は時々パーティメンバーとして参戦しますが。
(でも本人はシェスターの側に居たいと駄々をこね、なかなか猫屋敷の呼び出しに応じてくれない)
その6:ミイスの兄妹
よくあんな人と一緒にいられるわね。
セラって本当に失礼ねと、ぷんぷん怒りながらアイリーンが言いました。
たしかにセラは他人に対して高圧的で失礼です。
本当のことなので、アイリーンを責める気にはなれません。
どうして一緒にいられるのか、自分でも不思議です。
セラの言葉を色々思い返してみました。
探索依頼を、くだらん使い走りだ、と言います。
お前程度のひよっこが首をつっこむべきことではない、と言われたこともあります。
あきれたお人好しだなとも言われました。
たしかにセラは失礼ですが、セラらしくて安心します。
それに、なぜだか分かりませんが、
ひよっこと言われたり、怒られたりすると、安心感があるのです。
アイリーンにそう答えたら、彼女は不思議そうな顔をしました。
色々あったけど、ようやくお兄ちゃんを助け出すことができました。
お兄ちゃんも、一緒に冒険をすることになりました。
兄としばらく行動をともにして、アイリーンが言いました。
「あなたがセラと旅ができた理由がわかった気がするわ」
ミイスの頭文字はMです。
兄が仲間に入ったとき、兄妹の共通点に周囲は色々納得したらしい。
神官家の二人は、奉仕の精神にみちているので、そろってイバラの相手を選びます。
その7:セラの美意識
船に乗るといつも気になることがあります。
セラの髪です。
海風にあおられて、とてもうっとうしげに舞いあがってます。
見ていて邪魔そうなので、乗船前に三つ編みにしようとしたら怒られました。
セラは髪に自信をもっているらしいのです。
船を下りたら、いつも海辺で遊びたくなります。
特に南国の島エルズにつくと、その気持ちが強いです。
でもセラは全く思わないようです。
遊びに行こうと誘っても、行くなら一人で行ってこいと言います。
あるとき気づきました。
セラにとって日焼けは大敵なのです。
セラは夏と海が嫌いのようです。
確かに太陽光線も青い海も全然似合わない人です。
そういう人だから、ああいう格好を選ぶのでしょうか。
あの格好だから、夏も海も嫌いなのでしょうか。
美意識って、不思議です。
うちのセラは海が嫌いです。船旅も密かに嫌っています。
相棒のロイは、白い歯とさわやかスマイルで真夏のマリンスポーツが似合いそうなのに。
日光月光コンビはこういうところでも性質の違いがあります。
その8:シェスターの秘密
お義姉さんは、お酒に弱いらしいです。
飲むと人が変わってしまうのだそうです。
普段は大人しいけれど、お酒が入ると開放的で積極的になるらしいです。
別に酒乱ではないから問題ない、とセラは言ってました。
結婚してからお兄ちゃんは、しきりにお義姉さんに寝酒をすすめるようになりました。
「姉を酔わせて何をする気だ!?」とセラが怒っていましたが、
お兄ちゃんが何をするというわけでもなさそうです。
見ている限り、酔ったときの方が、お姉さんは強そうです。
開放的で積極的というよりも――なんだかとても攻撃的に見えます。
据わった目が、昔の怖い魔人を思い出させます。
危険な気がしたので、飲ませちゃだめだよ、とお兄ちゃんに注意しました。
でも、きいてくれませんでした。
「そこがいいんだ!!」
やけにきっぱりと言い切られました。
危険も顧みず、こっそりお酒の度数をあげる兄は、もう放っておくことにしました。
うちのシェスターは酔うとアーギルが出ます。
酔ったシェスターをはじめて見たとき、ロイは胸のときめきを覚えたらしい。
毎晩夫婦で仲良く晩酌。お酌をするのはもちろん夫。
その9:セラの助言
大人しくて、やさしくて、引っ込み思案なお姉さんなので、
きっと夫に不平や不満も言えないに違いない!とセラが悩んでました。
お兄ちゃんはシェスターさんを大切にするよ、と言いましたが、
ぜんぜん聞いてはくれませんでした。
だったら、昔お兄ちゃんが手製ノートを残してくれたように、
セラも、お姉さんにアドバイスを残しておけば? と提案しました。
さっそく作ったらしいです。極秘対策マニュアルだそうです。
極秘なら当然読みたくなります。
セラのいない隙に、こっそりめくってみました。
1:護身術
いきなりこんな項目でした。
姉の夫で自分の親友相手に護身術。友情のはかなさを感じました。
2:依頼
「頼み事は命令口調で。ロイ相手なら大丈夫」
力強く頼もしげな筆跡でコメントされてました。
3:道具
ちょっとばかり貧乏性なところのあるセラは、
道具を使うときには、色々口うるさかったことを思い出しました。
お姉さんは別に冒険者でもないのに、どんな道具が必要だと言うんでしょう。
……なんとなく嫌な予感がして、怖くなったので、ここでノートを閉じました。
後日、お姉さんがセラにお礼を言っているのを目撃しました。
アドバイスはとても役に立ったらしいです。
夫婦円満ならそれでいいかと思っておくことにしました。
うちのセラは筆まめで助言(小言)好きです。
お姉さんのためには真剣で一直線なので常識が見えなくなるらしい。
そして姉にとっては、弟のそういう状態が普通なので、特に不思議にも思わないらしい。
その10:除け者ルシカ
お兄ちゃんとセラの好みが違うので、シェスターさんが悩んでいました。
普段着てもらいたい服について、意見が真っ二つらしいのです。
お義姉さんとしてはどちらに合わせてもいいようです。
自己主張をしない人で、優柔不断なところもあるようです。
「じゃあ半々にしたら? 昼はセラ好み、夜はお兄ちゃん好みで」
冗談で答えてしまいました。
次の日の朝。兄が猛烈な勢いでやってきました。
「ルシカ! よくやった!!!」
それだけ告げて、お義姉さんのもとへ一直線に帰っていきました。
こんな興奮気味で嬉しそうなお兄ちゃんは、昔は見ませんでした。
仮面がはずれてから、こういう感じです。きっと副作用なのでしょう。
入れ替わるように、セラがやってきました。
「貴様! 姉に何を吹き込んだ!?」
月光で斬られてしまう! と怯えたくなるくらい、鬼気迫る勢いでした。
先日の相談内容を話したら、セラが怒りました。
「姉さんは純粋で優しいから、人の意見を素直に聞いてしまうんだ!」
奴と話をつけてくる、と殺気だった目で、セラは兄を追っていきました。
立ち去る後ろ姿を見て、ちょっと寂しくなりました。
お義姉さんばかりじゃなくて、妹もかまってください。
昼間のお義姉さんは、村の女性と同じような服装をしています。
セラの意見の反映して、スカートの裾は平均よりも長め、です。
問題は夜なのでしょうが、なんとなく憚られてまだ見てません。
ふと、なんでセラが知っているのか、気になりました。
うちのヒロインは、女主ではなくシェスターです。
兄とセラはシェスターの奪い合い。
友情にヒビを入れる色香に女主は負けるらしい。5年後リベンジ予定。
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