おまけSS 

  • パロディ設定に基づいたおまけSS。
  • サーカディアの場面を文字化したものと、現パロお約束ネタをやってみたもの
  • ただ書いてみただけなので、中身はないです(笑)

 オッシ叔父さんからの手紙アイリーンの差し入れセラ登場学園祭

【オッシ叔父さんからの手紙】

 幼いころに両親をなくした僕は、叔父さんに育てられた。叔父さんの職業はルポライター。職業柄あちこちを転々と巡り歩く仕事だ。そのため僕も叔父さんにくっついて、転校を繰り返す羽目となっている。
 今度の行き先は、海底都市バイアシオン。元はディンガル研究所と科学庁の共同研究施設だったのだけど、それがそのまま一般市民に解放されて今日に至っている。叔父さんにくっついて、いろんな地方都市を見てきた僕だけど、さすがに海中都市なんて初めてだ。

 不安と期待を覚えつつ、窓の外を見れば、飛行機の窓外には、一面の海原が広がっている。その海原の中に、ゆるく円を描く、巻貝を思わせる鉄と鋼の建造物が見えた。あれがバイアシオンか。

 飛行機が高度を下げていく。こうして僕は海面上に造られた人工都市バイアシオンの空港に降り立った。
 空港に降り立って、鞄の中からオッシ叔父さんからの手紙を広げてみる。
 相変わらず、人を食った内容の手紙だ。

『いきなりだが、俺の都合でまた引越しするぞ。
 行き先はバイアシオンっていうイカれた街だ。
 俺は先に引っ越したからお前も自力で追って来ないと叔父さん知らないよ。
 転校の手続きはしておいた。アカデミー学院っていうご大層な学校だ。
 制服を注文しておいたから、街に着いたら、学校まで行って取って来いよ。
 学校の場所はそこら辺の人にでも聞け。5時に校門で待ち合わせだ。
 以上、指令終わり。
 あなたのステキなオッシ叔父様より』

 いつも唐突なのはオッシ叔父さんの常だ。ルポライターの前は、自衛隊に居て秘密工作に関わって戦場で活躍していた、なんて本人言っているけど、どこまで本当だか分かりはしない。今は怪しげなオカルト記事のルポライターをしている。
 ともかく手紙によれば、僕は自力で学校まで行かなくてはならないらしい。

 やれやれ。オッシ叔父さんはどうしてこうも放任主義なんだろう。

★サーカディア弘樹くんの口調を意識してみました。オッシ叔父さんの手紙の文面は、サーカディア茂叔父さんの手紙と全く同一です。こういうのがジルオールで似合いそうなのは、オッシだ!と思ったところから、このパロディは始まりました。ジル現パロの原動力はオッシ叔父さんです(笑)

【アイリーンの差し入れ】

 マンションのリビングも台所も、相変わらずひどい有様だ。あちこちに散乱した原稿に、雑誌や書類、写真の束に怪しげな手紙。ルポライターなんて仕事をやっていたら、紙モノがたまっていくのは仕方ないってオッシ叔父さんは言うけど、僕っていう同居人もいるんだし、もうちょっと気を配ってくれてもいいんじゃないかな。

 ひとまず問題は今日の夕飯だ。でもその前に台所を片付けないと。でも片付けてたら、きっと夜中になっちゃうな。どうしよう。
 僕が台所で掃除にすべきか、コンビニに走るべきか悩んでいると、ピンポーンとチャイムの音が鳴った。誰だろう?
 マンションのドアを開けると、立っていたのは私服姿のアイリーンだった。手に包みを抱えている。

「夕飯はどうしたの?」
「え。まだだけど…」
「やっぱりね。はい、これ。オッシ先生に差し入れ」

 アイリーンは叔父さんのことを先生と呼ぶ。専門家としての見識(オカルト知識だけど)を活かして、あちこちの雑誌で記事を頼まれて書くこともある叔父は、アイリーンから言わせたら立派な「先生」なのだそうだ。とにかく、アイリーンが差し出した包みを受け取ると、ほわっと心地よい温かさが伝わってきた。おいしそうな匂いが鼻をくすぐる。

「あの、これって」
「肉じゃがよ。心配しなくても大丈夫。ちゃんとあんたの分もあるわよ」
「あ、ありがとう。今度おばさんにちゃんとお礼に言いにいかないと」
「お礼なら私に言いなさい。今日は私が作ったのよ」
「え!? アイリーンが!」
「何よ。その反応。私じゃ不服なの?」
「そういうわけじゃ…」

 そこでアイリーンは玄関先に立ったまま、僕の背後、書類が床にまで散乱している部屋の様子を伺い、それから不穏な気配が漂っているであろう台所に続くドアを見た。

「この様子だと、台所もきっと片付いてないんでしょう?」
「う…。まあ。叔父さんは家事が苦手だしね。掃除は特に」
「仕方ないわね。明日から、私が自分の分と一緒に、あんたのお弁当も作ってあげるわ」
「え、えええー!?」
「いちいち反応がうるさいっ。文句あるの?」
「な、ないです…」

 剣道部で日々鍛えているというアイリーンは、睨んだだけで迫力が出る。僕なんかがたちうちできるわけない。どうやら僕は、明日からアイリーンの手作りお弁当を持参することになりそうだ。

★幼馴染が夕食の差し入れを作ってくれる+お弁当を作ってきてくれるのは現パロのお約束です。でもアイリーンはこういうのちゃんとやってくれそう。

【セラ登場】 ※女主人公時

 放課後の学園の中庭には、たくさんの学生たちが集まって、賑やかに会話を交わしている。ここに居る人たちは、一応みんな私と同じアカデミー学院の学生のはずなのだけど、小学生から大学生までが集められているから、年齢もまちまちだし、科によって服装の規定も違うから格好もばらばら。まるで学校の中というより、街中のカフェにでも居るような気分だ。

 そんな学生でにぎわう中庭の片隅に、目を引く私服姿の青年が立っていた。一度見たら忘れないような印象的な姿は、遠目からでもすぐ分る。
 思わず私は駆け出して、声をかけていた。

「セラさん!」
「お前か」
 セラさんは駆け寄ってきた私を、驚くでもなく迎えてくれた。どうやら私と同じように、セラさんも私のことを覚えていてくれたらしい。もっとも火事の中であんな出会い方をしたら、忘れようにも忘れられないのかもしれないけど。
「セラさんも…アカデミーの学生だったんですね」
「専門学部のほうだがな。医学科だ」
「え!?」

 思わず私は驚いてセラさんを上から下まで眺めてしまった。
 ぴったりとしたTシャツは、二の腕どころか、おへそまで見えているし、首にはチョーカー。細身の黒ジーンズの先は、黒いブーツに収まっている。まるでロックバンドのボーカリストのような個性的な格好に、てっきり芸術関係の学科かと思っていた。どう見ても、医学生には見えないんだけど。

「あ。もしかして、軽音部に入っているんですか。これから部活ですか」
「違う。これはただの俺の好みだ」
 思わず私が口に出すと、セラさんは不機嫌そうに言った。違うのか…。
「授業で制服や白衣を着ることもあるが、今日は休講だ。自由な時間に、何を着ようが俺の勝手だろう」
「それはそうですけど…。あれ、休講なのに学校に? 何か忘れ物ですか」
「お前に会いに来た。俺に付き合え。言っておくが、お前に断る権利はない」
「えっ!?」

 突然のセラさんの言葉に、思わず私が鞄を抱えて後ずさると、セラさんは腕を伸ばして、私の腕をつかんだ。そのまま引きずっていこうとする。

「あ。あの、待ってください…。そんな、いきなり付き合えといわれても困ります」
「勘違いするな。昨日の火事のことを聞きたいだけだ」
 そこでセラさんも、ようやく私たちが周囲の視線を集めていることに気づいたらしい。舌打ちすると、私を引き連れて校門へと向かう。
「学内は人目が多すぎてかなわん。場所を移すぞ」

 そういってセラさんは学校を出て、裏通りを入ったところにある、こじんまりとした定食屋へ私を連れて行った。どうやら和惣菜のお店らしく、『隠れ里』と書かれた看板がひっそりと掲げられている。
 席に案内され、水が運ばれて来るのも早々に、セラさんは切り出した。

「あの火事の時、女の姿を見かけなかったか?」

★やってみたかった現パロ、スタートイベント。

【学園祭】

 通常の授業の合間に、賑やかな騒ぎ声と、大道具の作業音が聞こえ始める。来月のはじめから学園では、三日間の学園祭。どのクラスも準備で大忙しだ。生徒で混雑している学生食堂でも、会話の内容はやっぱり学園祭に関することばかり。
 ちょうどお昼時ということもあり食堂は混んでいたけど、顔見知りのフェルムとエストの好意で、無事僕たちは席を確保することができた。僕、アイリーン、ノエル、レイヴン、ユーリス、エスト、フェルムという大人数での賑やかな食事だ。当然話題は学園祭のこととなる。
 僕のクラスは、話し合いの末、なんと『仮装喫茶』をやることになったのだけど…。

「あんたまだ何の仮装にするか決まってないの? そろそろ衣装の用意をしなきゃ間に合わないわよ」
 アイリーンに怒られたが、仮装なんて初めてだし、何をどうすればよいのか皆目検討がつかない。僕はアイリーンにたずねてみた。
「そういうアイリーンは何にするの?」
「ふふふ。明治時代を舞台にした漫画のヒロインで、『剣道小町』ってキャラクターが居るの。若いんだけど師範代で、白いはかま姿に竹刀を差して、幕末動乱期に人斬りって呼ばれたけど実は心優しい元明治の志士であるヒーローを助けて、活躍するのよ。ちょうど剣道部の胴着がそのまま使えるし、私はそのキャラクターの格好をするつもり」
「なんだ。仮装って言っても、手抜きじゃないか…」
「何か言った!?」
「いいえ、なんでもないです」

 アイリーンが眉を吊り上げて怒る。僕が首をすくめると、ノエルが丸い目をくりくりさせながら、朗らかに言った。

「でもアイリーンさんなら、とても似合いそうです。実は私も、剣士の格好をしようかと思っているんですよ。私は西洋ものですけど」
「西洋ものって?」
「神のお告げを受けて、軍を率いて、百年戦争を終結させた戦乙女の格好をしようかと…うちの蔵にはご先祖様が集めた西洋の甲冑や剣がたくさんあるので、それが使えると思って」
 どこかノエルが恥ずかしそうに言った。僕のさっき言った手抜きという言葉を気にしているのかもしれない。悪いこと言ったかな。
 レイヴンがぼそりといった。
「俺も家に代々伝わる衣装を借りてこようかと思っている。昔先祖が隠密みたいなことをしていらしく、忍装束が一式残っている」
「みんな、すごい家柄なんだね…」
「あら。私は衣装は自分で作っていますよ。最近はそういうグッズを売っているお店もありますけど、やっぱりクオリティを求めるなら手作りが一番です。出来のよいものなら、その道のマニアには高く売れますし」
「マニアに売るって…ユーリス、何をする気なの?」
「『マジカル☆マノン』ってアニメ知りませんか? 変身ステッキを振って変身して怪人たちをやっつけるってアニメなんですけど。その主人公マノンの衣装を作ってますよ。特に変身ステッキは力作なのでぜひ見てください」
「へ、へえ……楽しみだよ」
「そうよ、あんたいっそ『シャイニングレオ』に仮装すればいいのよ」

 けらけら笑いながらアイリーンが言った。シャイニングレオ? なんだそれ?
 僕が尋ねると一同は顔を見合わせた。フェルムが言った。

「転校してきたばかりだから知らないんですね。バイアシオンの有名人なんですけど。ええとソウルリープ事件のことは知っていますよね? 原因不明の怪奇事件。それを解決してくれている正義の味方のことです」
「それも、深夜のアニメか何か?」
「違いますよ。ちゃんと実在するんです!」
「実在って…!?」
「ご当地ヒーロー番組よ。と言っても噂のシャイニングレオは、そっちのほうじゃなく、そのヒーロー番組に似てることからついたあだ名みたいなものだけど。
 夜中に出現する、正体不明の三人組。自主的にソウルリープ事件を解決している自警団みたいなものらしいんだけど。
 ほら、闇落ちした人間は、すごく凶暴になっちゃって手に負えないじゃない?
 それを片っ端から気絶させて事件を未然に防ぐんだって。警察が現場に到着する頃には、当人たちはドロンと消えてる。
 目撃証言によると、どうやらすごく腕の立つ三人組。全員武術の達人らしくて、一人は弓道、一人は剣道の達人、リーダー格の男は槍術の使い手らしい。さらにリーダーらしき男は全身黒尽くめで、ジャケットの背中に金色の獅子の刺繍がしてあるの。それで『シャイニングレオ』って呼ばれているわけ」

 アイリーンはオッシ叔父さんと親しくて、叔父さん経由で、いろんな情報を仕入れてくる。オッシ叔父さんと一緒に住んでいる僕よりも、遥かに事件に詳しく、すらすらと説明してくれた。
 夜中に活動する正体不明の正義の味方か。僕自身、あの不思議な生き物ネモから『超能力者なんだから仕事しろ』と言われて、怪しい事件の数々にかかわる羽目になったけど、ソウルリープ事件といい、正義の味方といい、海中都市バイアシオンでは何でもありらしい。

「そういえば、フェルムとエストのクラスは何をやるの?」
「えっと、私のクラスは家政科なので、ケーキやクッキーなどお菓子をつくって、販売します。楽しみにしてくれている人も多いみたいで、すぐに売り切れちゃうんですよ。当日は急いで買いに来てくださいね」
「僕は博物科の生徒たちと協力して、ミニ博物展を開くんだ。海中都市バイアシオンって、実は色々珍しい品が多く流通していたり、残されたりしているんだよ。もし時間があったら見に来てよ。そういえば兄さんは、本番の舞台の練習ですごく忙しいみたい」
「エストって、お兄さんいるんだ? 舞台って?」
 僕が尋ねると、今度はノエルが教えてくれた。
「エストさんのおうちは凄いんですよ。お能の名門竜賀家で、エストさんのお兄さんのレムオンさんは、その流派の家元なんです。実際にプロとして活動されている方なんですけど、学園祭のために無償で舞ってくれるんです。
 私、お能のことはよく分からないんですけど、それでもレムオンさんの舞は凄いですよ。鬼や幽霊の演目なんて、本当に人間じゃないみたいな不思議な迫力と引力があって…」
「そうだ。仮装が決まってないなら、そういうお化けみたいなものをやれば?」
 エストが僕に提案をしてくれた。
「吸血鬼はどう? あれなら黒いタキシードを着て、黒いマント、仕上げには作り物の牙をいれたらすぐそれらしくなるんじゃないかな。トマトジュースでも飲めば完璧だよ」

 吸血鬼か…。確かにそれならホラー映画の定番でイメージしやすいし、ハードルは高くなさそうだ。少なくとも夜中に出没する謎の正義の味方よりは、はるかに気楽だ。

「街外れのディスカウントストアには、いろんなパーティグッズも売っているし。ドラキュラの牙にぴったりな差し歯の玩具もあった気がするよ。
 そういえば、よくロイ先生があそこで買い物をしているって話があったね。紙袋を手に、こっそりと不思議な道具を買い集めているって。ロイ先生、どうしたんだろうね」
「ロイ先生?」
「私たちの国語の担当の先生。若くて爽やかで人当たりも良い、いい先生よ」
「僕たちのクラスは、ナーシェス先生が担当じゃなかったっけ?」
 よどみのない口調でてきぱきと授業を進め、鐘がなったらさっさと授業を切り上げて退室してしまう、ナーシェス先生の冷たくてとり澄ましたところを想像しながら僕が言うと、ノエルが言った。
「あの方は代理なんです。本当は私たちのクラスはロイ先生が見ていてくださってたんですが、先生は体調を崩されたとかで、お休みをなさっていて」
「俺はあいつは苦手だ。早く元の先生戻ってきてもらいたい。どうもナーシェスの話を聞いていると落ち着かなくて」
「そんな……レイヴン。ナーシェス先生も良い先生ですよ」
「そうだな。すまない」

 どうやらレイヴンはナーシェス先生が苦手らしい。ノエルにたしなめられて謝っていたが、たしかにナーシェス先生の、教師だから生徒を下に見ているのか、言葉の端々に浮かぶ上から物を見るような居丈高な物言いに引っかかる人もいるかもしれない。
 エストもレイヴンの言葉に隣でこっそり頷いていたから、エストもあまりナーシェス先生には良い感情を抱いていないようだ。フェルムが首をひねりながら言った。

「でも不思議なんですよね。ロイ先生、前日まではとても元気な姿で、いつもどおり授業をされていたし。
 実は、購買部に買いに来る女子たちから聞いたんですけど、もしかしたらソウルリープ事件に巻き込まれて、学校側はそれを伏せているんじゃないかって噂もあるんです。休講だっていうのも実は事件に巻き込まれて記憶喪失だとか……。病院に入院しているって話もあるんですけど、お見舞いに行っても面会できないみたいだし」
 フェルムの言葉を聞いていたら、アイリーンが思い出したように声を上げた。
「そうだわ。ロイ先生の休講って、ちょうどあんたが来た次の日からだったわ。そうか、だから知らないのね」

 僕が来た次の日っていうと、マンションの火事があった次の日のことか。
 そこで僕は、火事の中で出会った黒髪の長髪の青年の姿を思い出した。誰かを探していると言っていたけど、もしかしてその相手が噂の男性教師なのだろうか。
 いや違う、あのときはまだその先生は元気でいたはずだ。もしかして、僕のマンションに現れたあの不思議な女性が、僕のところに来る前に、その先生のところを襲ったとか。まさかね。
 正体不明の正義の味方や、学校の先生の休講のこと。そのほか様々に気にかかることはあったが、僕はそれを頭の片隅に押しやって、会話に耳を傾けた。

 どうやらとても盛大な学園祭らしく、ミスコンテストもあるらしい。去年は普通科のティアナという女子学生が優勝したらしい。
 けれど今年は彼女は留学中なので、誰が優勝するかわからないそうだ。また去年まで、飛び入り参加OKののど自慢大会も開かれていたそうだけど、ガルドランという問題児が舞台の上でワンマンショーを繰り広げて大暴れ、舞台はめちゃくちゃになるし、ひどい歌声を大音量で流されて近隣の住民から苦情が来るしで、今年の開催はどうするか検討中だという。

 ともあれ、賑やかな学園祭になるといいなと僕は願った。
 ついでに祈る。どうぞ何事も起こりませんように。

★学園現パロお約束ネタ『学園祭』。アドベンチャーゲームだと、こんな感じでイベント内会話で登場人物情報が分かるようになってるよね、ってことで。