舞台解説 

  • 海中都市バイアシオン
  • アカデミー学院
  • 娯楽商業施設部(ロストール、リベルダム)
  • ソウルリープ事件とは?

海中都市バイアシオン

 元は行政法人ディンガル研究機関(以降ディンガル研究機関と記述)と科学庁の共同研究施設。内部は五層構造を持つ巨大研究施設として、海中に建設された。ラドラス・エネルギーという独自のエネルギー循環機能と環境システムを備えている。

 五年前、バイアシオンの自治権・エネルギー技術独占をめぐり、ディンガル研究所内で権力闘争が起こる。多くの官僚と有力企業を巻き込んだこの事件は、最終的に所長バロルの死により決着。以降研究施設としての権限は縮小され、代わりに人工都市計画政策の一環として、一般市民が試験的に生活を始めるようになった。
 そのため現在では『ディンガル・科学庁共同研究所バイアシオン』より『海中都市バイアシオン』としての名称が通っている。

 だが、実際のところはバイアシオン内には、まだ多くのディンガル研究機関職員がおり、特にアカデミー学院はもともとディンガル研究機関が発足した教育機関という特性上、ディンガル研究機関職員や科学庁の影響力が強い。

アカデミー学院

 海底都市バイアシオン唯一の教育機関。小中高大(高等部より専門学科を選択)の一貫性の教育を行う。各学部・学科により制服が違うため、人目で誰がどの学科に所属しているか分かる。バイアシオンの第二層にある。

娯楽商業施設部(ロストール、リベルダム)

 第三層の大半を占める商業施設。ロストールホールディングとリベルダムコーポレーションが主に進出展開している。食料、日用品、医薬品、家電などバイアシオン生活内でのありとあらゆるものが揃うほか、映画館や遊園地、レストラン、バー、カフェなどもある。

 ★ソウルリープ事件とは?

 時は2000年。
 行政法人ディンガル研究機関(以降ディンガル研究機関と記述)と科学庁の共同研究施設・海中都市バイアシオンは、元は海中に設営された巨大人工研究所だったが、現在は海中人工都市として解放され、一般人も多く住んでいた。

 その海底都市内で最近、通称『ソウルリープ事件』と呼ばれる怪事件が起こっていた。

 それまで高潔で非の打ち所の無い人格者が、突如その人格を豹変させ、超人的な能力を発揮して、凶行に走る。
 人格豹変の理由は不明。多くは突発的な衝動性を伴う器物損壊・暴力罪として現れることが多かったが、その破壊能力や規模は、人的想定値を超えるもので、時には建物一つが倒壊するなど甚大なものもあった。

 自分の隣人が、ある日突然超人的な力を発して変貌するかもしれない。
 理由のつかない原因不明の現象に、都市住人たちの間には、ひそかな不安が広がっていた。

名称の由来

『ソウルリープ』の言葉は、研究者ゾフォルがまとめた報告書が元になっている。

 ゾフォルは、最近のバイアシオン内における急激な人格変貌および彼らの破壊衝動、その超人的被害の原因は、異次元の特殊精神生命体・『ティラの娘』にあるとの自説を披露した。
 要約すると以下となる。

1.ティラの娘は、精神生命体のため、物質的な肉体を持たない。

2.ティラの娘が二次元上で活動するためには、特殊なエネルギー転換作用がいる。
 そのため憑きやすい精神構造を持った人間を、宿主としてとり憑く。
 その者の精神や記憶(ソウル)を吸い取って、自分たちのエネルギーとして別次元に変換転送(リープ)し活動する。

2.ティラの娘は、直に人間の精神に働きかける。反応は正負両極で現れる。
 ティラの娘に憑かれた対象者は、精神構造が変化し新しい可能性が引き出される。あるいは精神破壊が起こって無気力になる。

3.ティラの娘は、正と負の性質を持つものがいる。
 正のティラの娘と融合(※この場合は『共生関係』と呼ばれる)したものはソウル覚醒者となる。
 負のティラの娘に憑かれた者(※この場合は『乗っ取り』とも呼ばれる)は自我を喪失し、自身の破壊衝動や欲望・願望のまま行動してしまう。

4.ティラの娘の影響は、宿主の精神力の強靭さ × 精神生命体の特性 を掛け合わせたものとなる。
 ティラの娘に憑かれた対象者は、精神構造変化し、新しい可能性が引き出される。あるいは精神破壊が起こって無気力になる。正負両極の反応を示す。

 体力・気力が飛躍し、超人めいた力を発揮し、中にはESP能力が発現する者(=ソウル覚醒者)もいる一方、精神を侵食され心神喪失状態陥る者(=通称闇落人※後述)もいる。
 ソウル覚醒者の場合は、自我を保ったまま潜在能力を自在に駆使することができるが、闇落人の場合は自我は失われ、場合によっては自身の許容量を越えた力を使い切って死亡する。

学説発表後

 このゾフォルの発言は、公的機関や学会に認められることはなく、ゾフォルはこの件がもとで学界を去ることとなった。

 彼の論説は、オカルト雑誌で面白おかしく興味本位に書きたてられるだけだったが、この謎の事件が通常の犯罪事件とは、根本的に異なるものということは、バイアシオン都市住人たちも感じていた。
 ゾフォルの学説の一部だけが都市伝説的に広がっていき、いつしか特殊能力を発揮する人格豹変者は『闇落人』と呼ばれ、彼らの起こした事件は『ソウルリープ事件』と呼ばれるようになっていた。

 住人たちの噂にあがるのは、ほとんどが闇落人のことだったが、彼らは知らない。
 その裏で、同じくティラの娘の影響を受けながら正の力を得た者=ソウル覚醒者もまた密かに存在しており、そしてソウルリープ事件を解決するために活動していることを。

 人知れず、人知を超えた正負の戦いが行われている、海底都市バイアシオン。その唯一の教育施設であるアカデミー学院に、今日、一人の若者が外地から転入生としてやってきた。

 融合ノ時ハ近イ――大いなるソウルの物語はここから始まる。