文章修行家さんに40の短文描写お題
65文字以内で場面描写。描写じゃなくて、モノローグで逃げてるのも多数ありますが(…)お遊び要素もほしかったということで、見逃してやってください。
一応ゲーム内のキャラを念頭においてます(ないのもある)。
誰のことか、わかったら嬉しいです。
配布元 http://cistus.blog4.fc2.com/
お題 01-10
.01.告白
納屋から泣き声が聞こえる。閂をあけると、一目散に飛び出してきて、感謝の声で抱きつかれた。その子はもういない。告げることあったのに。
.02.嘘
巨大な鎌を脇に置き、白い墓石に陽気な口調で報告をする。溢れる陽光下では常に笑顔で。だが褐色の瞳は、曇り空に湿っていた。
.03.卒業
酒場の戸をあけると、視線が一斉に降り注いだ。「ロストールの守護神様!」酒瓶差し出す手も恭しく。有名人はもう気軽には飲めないらしい。
.04.旅
地図を取り出し、旅程を書き入れる。探索地は東の山裾の溶岩窟。目的の品を手に入れたら、船で十日波に揺られて寄港。大都市まで徒歩二週間。
.05.学ぶ
「ハヤスの葉、早す取れなんてね、ププッ」「言うと思ったよ」「くだらん使い走りだ。帰るぞ」「じゃエスケープ」互いの反応、学習済み。
.06.電車
彼の仕事ぶりは有名だ。執務室の扉は常に定刻に開き、書類は滞りなく次の部署に流れ、期日には処理終了。時計針の髪型は伊達ではないのだ。
.07.ペット
奇怪で醜悪な合成魔獣を前に、男は敬虔な気持ちで聖杯を握り締めた。誰もが飼っている真実の姿を目にできて、感謝と満足があふれた。
.08.癖
隣には自分と同じ顔。背後を振り仰げば、誰よりも頼りになり、誰よりも放っておけない「お兄ちゃ…じゃなくて」。口癖だけが宙に消えた。
.09.おとな
気づけば市井のボロ剣術道場師範。白亜の王宮に登城して、ワイン片手に談笑よりは、遥かにマシな大人か。剣を片手に男は微笑んだ。
.10.食事
料理担当は彼らしい。フライパン貸しての声が嬉しくて、戦闘後はいつもピカピカに磨いておく。本当は私の手料理を食べてもらいたいけど。
お題 11-20
.11.本
魔術書の記述通りに、材料を混ぜ、精神を集中し、呪文発動。実験は大成功。でも予想外の威力で大目玉。書物も越えちゃう天才って不遇よね。
.12.夢
隣から笑い声が響く。指先で部屋を探ると、掌に冷たい扉の感触が伝わった。光があれば、隣の女性のようになれるだろうか。知らず吐息が漏れた。
.13.女と女
黒甲冑の大きな背中は、途轍もなく頼もしく遠かった。憧れとやるせなさと嫉妬を込めて、弓を引いていた。その弓を今、別の女の手にたくす。
.14.手紙
紙の上の言葉は、仮面のようなものだ。本心も企ても隠しておける。友からの手紙を握りしめ、真実は自分の剣で見極めると彼は決意を改めた。
.15.信仰
多くの試練と誤解に心身を痛めつけられても、時に弱者にパンを分け与え、背中のギターで迷える魂を鼓舞する。勇者の道は常に孤独で険しいのだ。
.16.遊び
子供たちと小さな翼で戯れる友の姿を、男は嬉しげに眺め、趣味の絵筆を走らせる。牙や爪を隠さず振るわず共存する生き方を、描き留めるように。
.17.初体験
湖面の影は銀の飛沫をあげ、巨大な水蛇として現れた。船上の悲鳴の中、冒険者の少年は大蛇の神々しさに目を見はる。巫女の少女が微笑んだ。
.18.仕事
唇に指を立て、同行者に沈黙を促す。透明呪文で、街道にたむろする盗賊の間をすり抜ける。仕事は迅速に要領よく。これが多額の謝礼の秘訣。
.19.化粧
瞼は濃い目の色つき練り粉。唇は挑戦的な強い赤。銀の髪はそのままで。髪や瞳の色を偽りで変えるより、これが私と胸を張って素顔を彩る。
.20.怒り
鋼の断末魔が周囲に響く。自分の名を冠した剣の凶行を聞き、仕上げたばかりの剣を叩き折った。以来、鎚を振るう音も情熱も消えた。
お題 21-30
.21.神秘
喋る白猫に唆され、子鬼たちは祠を訪れ、聖杯を手に取った。「これで賢くなれるゴブか」言葉を得て三匹は奇跡に喜び、幸せ求める旅に出た。
.22.噂
上等の酒樽、下戸の客用の上質な茶葉、最新珍妙な噂話。この三つを備えた酒場は、必ず繁盛するそうだ。とある酒場で耳にした噂だがね。
.23.彼と彼女
彼が楽器を奏でると、彼と似た装束の娘が心得顔で、身軽に愛らしく舞い始めた。種族の舞踏曲。だがそれ以上の不思議な絆が二人をつないだ。
.24.悲しみ
遺跡の発掘道具を戸棚にしまい、鍵をかける。無意識に兄の姿を探す。当主の椅子は空のまま。要を失った屋敷は、がらんと頼りなく見えた。
.25.生
かつて心は常に平らだった。けれど何度もここを訪れては覗きこむ瞳に触れるうち、心は身体より先に崩れ始めた。生は火より熱く、死は苦い。
.26.死
鋭い長槍が腹部を貫く。倒れ伏す際、金の髪が目に入る。愛した女と同じ色。息子に討たれる役目は果たした。今ようやく彼女の元に逝ける。
.27.芝居
屋敷に戻ると、自慢の娘が優雅な仕草で父を出迎えた。男が快活に応じる。血に染まった商売の顔は外のもの。娘の前ではただの優しい父親だ。
.28.体
鏡の前で新衣装を確かめる。ひらひらの神官服は四肢を覆い隠してくれる。木偶の坊に近づいていくこの体、いつまで誤魔化せるやら。
.29.感謝
その強さも生き方も全てが目標だった。だから形は苦くとも本望だ。万感の思いを込め、彼女は背中の大剣を引き抜き、憧れの相手に向けた。
.30.イベント
闇に蝕まれた王は速やかに討ちとられた。私が闇に負けても止めてもらえる。奇妙な安心感で、彼女は血染めの玉座と新しき覇王を見つめた。
お題 31-40
.31.やわらかさ
枯葉舞う森の中で赤子が泣いていた。幾多の芽吹きと実りを経て、赤子が立派に育ったころ、女は穏やかな目の優しい母に生まれ変わっていた。
.32.痛み
黒甲冑の略奪者は、姉とその心を奪っていった。銀の髪に茨の記憶を宿し、少年は救世主となり破滅を説き歩いた。望むものは既に世界にない。
.33.好き
いい加減で下品。腹の立つ言動ばかり。けれどあの夜私を叱った声。庭園で怪物に挑んだ姿。内乱の最中の遺書は。婚約を違う形で持てあます。
.34.今昔(いまむかし)
金の髪をなびかせ、圧政下の農村に現れた彼は、私の世界を一転させた。今は銀の髪に変じた彼と共に、平和な麦穂の村を懐かしく眺めている。
.35.渇き
砂に埋もれかけた部屋で、地平に沈む夕日を見ていた。この砂漠向こうの時計塔の大都市、その先へ。くびきの解ける日を夢見て、星を数えた。
.36.浪漫
赤い鎧は武勇の証。幾多の闘いと思い出を刻んで、今もなお陽光に照り映える。怒涛の歴史なら最後まで歩んでみたいと、老人は豪快に笑った。
.37.季節
常緑不変の森の外では、風桜が舞い、白帆が海原を抜け、街道は黄葉に染まり、霊峰から寒風が吹く。だ、だからって驚いたりしないんだから!
.38.別れ
餞別に残されたのは薄い仮面。傍らに寄り添う彼の姉と共に、森の彼方を見つめる。私達はこの森に。親友と妹は遥かな旅へ。どうか幸あれ。
.39.欲
埋もれた宝に陽を当てること。それが己の使命だ。名品珍品盗品が並ぶ美術館の地下で、屈強な執事は、偉大な歴史画を誇り高く仰ぎ見ていた。
.40.贈り物
部屋中央で、不思議な青い光が筒状に伸びている。人を呼び出し送る機械の前で、多くの魂との出会いを祈り、賢者は微笑んだ。「自由な旅を」
2012-09-08
- 文章修行家さんに40の短文描写お題
- 熱くほっとする日々