ディンガル・ロストール王族の対比構造
ジルオールは、家族縁が薄いキャラが多い気がします。ゲーム開始時には、既に両親・家族が他界しているケースが多い。
シスコンはたくさんいますが(笑)、これは家族縁が薄いからこそ家族愛が強くなった、ともいえるかもしれません。
そんな中でロストール王家は、ゲーム進行上で家族問題が展開されます。
一方ディンガルは、家族問題は終了済+母親=女性の影がない(故人として登場しない)。
以下、そんなジルオールの物語上での対比構造・王族編。
断片的でまとまってないですが、ざっくり気になってる部分を書いておきます。
ツイッターでエリスの話題になったとき、「ロストール王家は、親子・夫婦問題が目の前で繰り広げられる」という視点をツイッターでいただいて、あああーなるほど!! と思いました。
というのもジルオールは家族が欠けているキャラが圧倒的に多いので、夫と妻、両親と子(娘)の三者が健在かつそれぞれの視点が見えるのは、ほぼロストール王家だけ、なんですよね。
さらにロストール王家の家族問題は、心情面に基づいた結構リアルな描かれ方。政治権力など目に見える部分の力構造ではなく、劣等感や愛情や猜疑といった心情面・感情的なもつれとして描かれる。
展開する期間も長く、ゲーム内ではほぼ全般を通して。年表で見れば現ロストール王家の問題は、きっとエリス結婚時から現在もなお進行中。具体的な解決策も最後まで明示されない。
これと対照的なのがディンガル皇族。
ディンガルはというと、義父に育てられた英雄が、祖父・父・叔父を殺し、帝位につく。心情的な軋轢やゆがみはあったでしょうが、それらはあまり示されず、主人公であるネメアが自らの手で(相手を殺すという形で)決着をつける。
ネメアの家族問題には、愛憎といった感情面の生々しさは見えないです。ネメアは既に家族という纏まりを越えた覇王であり、彼の家族問題はロストールとは真逆で、心情争いではなく権力争い、歴史的な出来事としてかかれる。短く乾いた処理済の闘争。
そんなディンガル帝国内には、もう一つ親子関係があります。
ベルゼーヴァとシャローム。奇しくもベルゼーヴァも元は立太子=皇族として置かれ、さらに義父・養父他『父親的存在』を複数もちます。
こちらの親子関係(?)は、一応プレイ時(バロル討伐後~神聖暦1200年)現在も継続中ですが、やっぱりロストール王家の血肉の通った生々しいものとは全く違う。
情ではなく理のもの。この父子の対立は互いの思想の差による争いであり、こじれたりは特にしていない(そもそも和解しようなんて思ってない。平行線として描かれる)。
ディンガル帝国内の親子関係(帝位継承)は、相手を征服する形=父殺し(あるいは息子を返り討ち)で獲得する構造です。
だからゲーム内で登場するのは父側=男性側の存在が多く、女性の影がないのかもしれません。
けれど矛盾するようですが、ディンガルは有能な人物は男女問わず要職につくことができ、女性の将軍も普通にいることから、統治者として男女の別も定めていない気がします。ザギヴ皇帝ルートがあるわけだし。
この「どちらでも可」というディンガルのお国柄で、あえてプレイ時(バロル討伐後~神聖暦1200年)のディンガル王位が男性のみで展開しているというのは――これはやはりロストールを意識してと思います。
ロストールは、女が騎士になれないという法律がありながら、現王政の中心は王妃エリス。そして次期王位継承者も、ティアナ・アトレイアという二人の『王女』で置かれている。
ディンガル帝位では男性が意識して配置されているのに対し、ロストール王位ではおそらく女性が意識されている。
だからロストールの闇は『闇の王女の晩餐』=王女によって表されるんだと思います。
(神聖暦1200年時点での)ロストールは、女性で動かされる国なのかもしれない。
そういう視点で統治者像を見ていくと、武力で息子が父を殺して帝位につくディンガルに対し、ロストールで王位につくことは女性側に基軸がある、構造的には『婿入り型』になるんじゃないかと。
※一応先王が死んだあと王弟だったセルモノーが王位を継ぐ→男性が継承した形になっていますが、そのためにはファーロス家エリスの権力が必要だった、という描かれ方で。
見方としては、婿入り型としてとれる気がします。
セルモノーは権力を得るためにエリスと政略結婚したわけですが、これは心理的には「権力のためにエリスを嫁として娶った」よりは、「エリスの元に婿入りした(自身の男性性を引き換えにした)」と無意識に感じてるからじゃないか。
「兄(の血筋=遺族・娘)から王位を奪ったこと」の負い目ではなく「その手段として女側に取り込まれた(擦り寄った)」ことへの苦渋と屈辱がどこかにあるのかもしれない……そう考えるとあの抑圧・鬱屈・劣等感具合も分かる気がして。
(ロストールは差別意識が強い国と設定されていることも根底にある気がする)
これ、もしセルモノーが「自分がエリスを娶ってやり、王家に引きいれてやった側だ!」と胸を張れるくらいの権力志向・自尊心の高いタイプだったら、全然違ったと思うんですよ……。
下手をすると、そのほうがエリスは幸せだったかもしれないと錯覚しそうになるのが、本当に泣きたくなるほどうまくいかない人間関係だな(=物語的にはすごく上手な造り)というか。
ちなみに、こういう自尊心の強そうなタイプとして浮かんだのが、リベルダムのロティでした。
ロティは政略結婚で政治権力を握ることを、スマートなやり方としてむしろ誇るんじゃないかな。この人は政略結婚も父殺しも、目的のものを得るための手段の一つとして同価ととらえるだろうし、たとえ政略結婚であっても、それで得た妻も娘も大事にすると思う(商人だから『利益をもたらしてくれた』ものに劣等感は持たず、大切に保有する)。
でも「愛のない結婚をした」と苦しむくらいのセルモノーの繊細さを思うと(笑)
どうひっくり返しても、父殺しをして統治をするタイプではないわけで。婿入りすることで集団をまとめていくタイプ……というか、この方法じゃなければまず権力を握れなかったろうと思うのです。自力ではできなかっただろうなあと。
(そういう意味では、先王フェロヒアはどういう経緯で王位についたのか気になります(笑)
なんとなくイメージ的に、ロストールの歴史上では珍しく血の気盛んだった王という気もするので、もしかしたらこの人は自ら策略路たて王位をつかんだ人なのかもしれない)
家族問題がリアル展開する現ロストール王家と、血のつながらない父系要素が強い現ディンガル皇族。
構造的には女性に軸がある形(婿入り型)で得る王位と、武力で父殺しをして得る帝位。
並べてみると綺麗な正対称な気がして、ジルオールは本当に構造が良くできていると思いました。きっと、まだまだ気づいてないものいっぱいある。
思いついたことを書き止めただけなので粗だらけですが、個人的なジルお話ネタ帳・思索の一端として置いておきます。